ナノ粒子は化粧品と密接な関係

皮膚を通過しない説のナノ粒子

バース大学

 

どんな化粧品を使っても皮膚を通過しないとの説を取る。バース大学論文です。皮膚の研究、解明はこれからも続きます。

 

ライフ・医療 2012/10/22
新しい研究はナノ粒子が皮膚を通過しないことを示した 〜New study says nanoparticles don't penetrate the skin〜

 

英国のナノテクノロジーポータルサイトInstitute of Nanotechnologyは2012年10月3日に,英国バース大学薬学・薬理学科(Department of Pharmacy and Pharmacology, University of Bath)Richard Guy教授らがナノ粒子(Nanoparticle)は皮膚を通過しないという結果を得たと報じる同校の10月1日付けニュースを紹介した.薬用や化粧用のクリームに入ったナノ粒子は皮膚を通過して,奥深くまで成分を運ぶことができるという説に挑戦するものであるという.詳細は薬品搬送システム(Drug Delivery System, DDS)の総合的な学術専門誌Journal of Controlled Releaseに掲載された(注).

 

 髪の毛の100分の一の大きさのナノ粒子は,日焼け止め,化粧用,薬用のクリームに用いられ,皮膚の局所(topical)DDS製剤成分(formulation component)として広く研究されているが,用いたナノ粒子が最終的にどこに落着き,どう処理される(disposition)かについては対立するいくつかの見解があった.そこで,バース大学の研究チームは,共焦点顕微鏡像(confocal microscope image)を用いて,哺乳類の皮膚に施された製剤成分の行き着く先を突き止めることを試みた.Guy教授は「共焦点顕微鏡を用いることにより,でこぼこの皮膚表面でナノ粒子に何が起っているかを,曖昧さなく可視化できる.以前の研究ではナノ粒子が皮膚を通過するように見えたが,我々の結果はナノ粒子が皮膚の襞に被着するに過ぎないことを示した」と語る.

 

 皮膚表面の表皮脂質(sebum)は元々蛍光性を持つので皮膚の一番外の面を明確に捉えることができる.蛍光を持たせた,20〜200nmのポリスチレンナノ粒子を水に懸濁させて皮膚に接触させると,ナノ粒子は剥離層(stratum disjunction)のみを通過し,角質層(stratum comeum)という皮膚の表面層は通過しないことが分った.通過量は16時間までの接触時間やナノ粒子の大きさに依存しない.皮膚を傷つけても,15〜20μmの皮膚層(skin layer)表面にある2〜3μmの層にしみ込むだけであるという.つまり,多少の傷はあっても,ナノ粒子は表皮(superficial layer)を越えて真皮(epidemis)の細胞には到達しない.従って,ナノ粒子をベースにした局所搬送システム(topical delivery system)は,薬剤放出を制御して行う(controlled drug release)際に皮膚表面の薬剤貯留(skin surface reservoir)として有用だとする.

 

 Guy教授は,「皮膚の役割は危険かも知れない化学物質の障壁となり,人体からの水分放出を抑えることであり,今回の結果は皮膚がその役割を果たしていることを示した.疑問を持たない消費者はナノ粒子がスキンクリームの有効成分を皮膚の奥まで運ぶと考えていたかも知れないが,我々の結果はそれを否定した」と語る.この結果から,長期にわたり,薬剤の有効成分を制御して放出するナノ粒子製剤の設計が可能になるという.患者に薬剤を投与する間隔を長くすることができるだろうと,研究グループは期待している.

 

(注)Christopher S.J. Campbell1, L. Rodrigo Contreras-Rojas, M. Begona Delgado-Charro, and Richard H. Guy, "Objective assessment of nanoparticle disposition in mammalian skin after topical exposure", Journal of Controlled Release, Vol. 162, No. 1, pp. 201-207 (20 August 2012)